親父の海賊船
昔、私の父は自分の身につけた技術を賭けて冒険の旅に出た。
父の職業は勇者じゃなくて、包丁とフライパンが武器のコックさん。
32年間、母と二人で小さな店を切り盛りしてきた。
単純計算してみたところ、父の両腕から作り出された料理は、32年間で延べ5万人以上の人達の空腹を満たし、その人達の栄養の一部となった。
私には父と同じ生き方は真似できない。
数年前、父の冒険の旅は終わりを迎えた。
余力を残しての勇気ある撤退。
お客さんに惜しまれつつ、閉店の日にお客さんから花束をたくさん頂いたり、プレゼントを頂いたり。
感慨深げにお店の外観を眺めるお客さんの姿がとても印象的だった。
32年間両親と苦楽を共にした海賊船は、現在とある船着場で休眠中。
父の海賊船は、「有限会社」として今もカタチを残している。
次に操縦するキャプテンをひたすら待ち続けている。
私には父と同じ生き方はできない。
しかし、近い将来私は父の海賊船を改造して冒険の旅に出る決心をした。
私には私の武器と戦い方がある。
一人じゃない、私には頼れる相棒、カミさんがいる。
両親のように夫婦海賊で大海原に舵をきる。
「成功」というお宝を求めてフルアヘッド!
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