同人活動は収益化できるのか?
新たに同人活動を始めた同人作家さんとお知り合いになったので参考情報として僕の知見を記します。
同人活動は収益化できるのか?
この問いに対して、今年3回の文芸同人誌即売会に出店した経験から導き出した僕の答えは、
「同人活動を収益化することは非常に難しい」
でした。
まず、市販の本の原価率の例をご説明します。
《市販の本の原価率の例》
●書店のマージン ⇒ 22%
●取次卸のマージン ⇒ 8%
●出版社の原価率 ⇒ 70%
(内訳)
・著者への印税 ⇒ 10%
・本の製造原価 ⇒ 30%
・販売管理費 ⇒ 20%
・出版社の利益 ⇒ 10%
小説同人誌の場合、上記のうちの書店のマージン(22%)、取次卸のマージン(8%)、出版社の原価率のうちの出版社の利益(10%)、合計40%の費用が発生せず、その分を本の印刷・製本代、販売管理費、利益にあてることができます。
しかし、市販の本の製造原価が30%に抑えられるのは、一度に数千部以上の大量生産するからこそであり、小ロット印刷の小説同人誌の製造原価は高くなってしまいます。
表紙のデザイン、ブックカバー、帯など、本の装丁にこだわればその分製造原価は高くなります。
上記を踏まえて導き出した小説同人誌の原価率の割合の例は以下のとおりです。
《小説同人誌の原価率の割合の例》
●本の製造原価 ⇒ 40%~80%
●販売管理費 ⇒ 10%~20%
●利益 ⇒ 10%~40%
販売管理費は、文芸同人誌即売会におけるPOPの制作費などや、無料配布本の製造原価の回収を目的とした費目です。
文芸同人誌即売会の出店料は、利益で回収していくことになります。
文芸同人誌即売会の出店を想定して具体的に条件を設定して金額を試算してみると以下のようになります。
《想定条件》
●文芸同人誌即売会出店料:5,000円
(テキレボと文学フリマ東京(椅子2脚分)の中間の金額)
●有料頒布本の頒布価格:500円
●有料頒布本の仕様
冊子サイズ:A6(文庫サイズ)
ページ数 :100ページ
印刷部数 :50冊
表紙印刷 :表1・4:フルカラー、表2・3:モノクロ
制作代金 :12,500円で試算(1冊あたりの製造原価:250円)
●無料配布本の仕様
冊子サイズ:A6(文庫サイズ)
ページ数 :30ページ
印刷部数 :50冊
表紙印刷 :表1・4:フルカラー、表2・3:モノクロ
制作代金 :7,500円で試算(1冊あたりの製造原価:150円)
《有料頒布本の原価率の割合》
●本の製造原価 ⇒ 250円(50%)
●販売管理費 ⇒ 150円(30%)
(無料配布本の製造原価)
●利益 ⇒ 100円(20%)
●完売した際の利益 ⇒ 5,000円
上記の想定条件の場合、有料頒布本が完売できれば出店料は回収できますが利益は得られません。
本の製造原価には本の装丁に関連する費用は含まれていませんし、無料配布本の製造原価が高く、市販の本の販売管理費よりも上回っています。
1回の文芸同人誌即売会で1種類の有料頒布本を完売するのは非常に難しいことです。
複数回の文芸同人誌即売会への出店を想定して、有料頒布本と無料配布本の印刷部数を増やして1冊あたりの本の製造原価を下げたりといった利益を増やす工夫が必要です。
有料頒布本を複数種類に増やせば制作代金は追加で発生してしまいますが、無料配布本の製造原価を回収するあてが増えるので販売管理費を抑えることができます。
厳密に言えば、文芸同人誌即売会の会場までの往復交通費などを考慮に入れると出店料を回収できてもそれ以上の利益が得られないと赤字なのです。
したがって、「同人活動を収益化することは非常に難しい」という答えにいたりました。
では、
なぜ、同人作家さん達は赤字になることがわかっていて同人活動を行うのでしょうか?
それは、
「一人でも多くの方に自分の書いた作品を読んでもらいたいから」
だと思います。
僕もそのように思っています。
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